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~三輪医院 往診活動記録~

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ただいま往診中 その10


寝たきり老人力

三輪誠

 

「こんな年寄りになってしまって、何の役にも立ちません。」「早く死んだほうがましです。」そんなことをいうお年よりがいます。ほんとうに何の役にも立たないのでしょうか。

 その人は脳の外傷が原因で寝たきりでした。退院した直後は杖をついてリハビリをしていましたが、やがて動けなくなり、しゃべらなくなり、ついには鼻から管をいれて生きていくことになりました。管を入れる時は随分と家族と話し合いましたが、「このまま終わるじゃあかわいそう。」という奥さんの一言で管が入りました。

それからまた長く寝たきり生活が続きました。体はますます衰弱し、骨と皮になってしまいました。

「困ったよ、こんなになっちゃって。早く終わったほうが良かったかしら。」とか言いながら、奥さんはかいがいしく看病していました。

そしてついに最期の日がきました。

「先生、いろいろありがとうございました。おかげで無事に終わりました。でも不思議です。孫が急に介護の学校へ進学すると言い出しました。」と嬉しそうでした。

寝たきりになりながら必死に生きようとしたおじいさん、最期まで夫を見つづけたおばあさん、かげで支えたお母さんとお父さん、それらをそっと見ていたお孫さんが介護の道を志したのです。

私はおじいさんが「寝たきり老人力」を発揮したためでしょうと