
看護師としての仕事は、健康状態の観察、検温、血圧測定、薬の管理、それから必要に応じてキズや床ずれへの処置が基本となります。このほかに食事や入浴の介助、陰部洗浄など、手が空いていれば介護士さんの応援にはいります。
入所者さんは自分から訴えてくれることが少ないので、ちょっとした変化を見落とさないようにしなければなりません。普段と違う様子が見られたときには、声を掛けたり熱を計ったりして原因を探っていきます。ただ、系列のデイサービス「みわさんち」からここに移ってまだ半年なので、介護士さんのほうが入所者さんのことについて詳しいんですね。相談したり、助けを借りたりしながら、どんなふうに仕事をすればいいのか模索しているところです。

看護学校を卒業して、最初に配属されたのは脳神経外科でした。そこでの経験が介護の仕事に携わるきっかけになっています。
やっぱり学校の勉強では、きれいなところばかりを見ることになるわけなんですね。もちろん、それはそれで悪いことではありませんが、実際の現場では、それも脳外という他の科とは少し性質の異なる場所では、習ったことが役に立たなかったり、やっている仕事が虚しく感じられたりすることもあったんです。そこで立ち止まって本当にやりたいことはなんだろうと考えたときに、「私にはこっちかもしれない」と思ったのが介護の仕事でした。
ちょうど結婚し、子育てのために職を離れていたので、その間に介護福祉士の資格を取ろうと通信講座で勉強をはじめました。縁あって「みわさんち」でお世話になり、今は看護師として仕事をさせてもらっているわけですが、気持ちの半分くらいは介護士。できるだけ介護の仕事にも参加できればと思っています。

もう先が長くないことを入所者さんご自身がわかってみえるとき、どう関わったらいいのか、いつも悩みます。痛みに苦しんでいる入所者さんの部屋にはいるときは、「なんて話しかけよう、どんな顔でいればいいだろう」とドアの前で考えて、それまで普通にできていた自然な笑顔さえできなくなってしまう。本当に未熟だなと思います。でもそういう心の動きが必要なものだ、という思いも。肉体的な大変さはどうにでもなりますが、気持ちの面はなかなか整理するのが難しいですね。
日常の仕事では、入所者さんが急変されたときに、どう対応するかが課題です。何かが起きていることはわかるけれど、何が起きているかはわからない。そんな状況の中で、素早く的確な対応をすることは、何年この仕事をやっていても難しいものがあります。これは経験を重ねながら、そして介護士との連携を深め、医師に支えてもらいながら、クリアしていくしかないと思う。勉強しなければいけないことは、まだまだたくさんあります。
喜びを感じるのは、気持ちが通じた瞬間ですね。例えば認知症の方が、なんとなく顔を覚えてくれたなと感じるとき。毎日顔を合わせていくうちに、顔つきが変わり、印象がやわらかく感じられるようになると、こちらも自然に優しい気持ちになります。
入所者さんの中には、最期のときまでここにいなければいけないということをわかっている方もいらっしゃいます。そういう方がその状況を受け止めて、これまでのことだったりいろいろな思いだったりを聞かせてくれるのも、じんわりとうれしいものです。
日勤のときはやることがたくさんあって時間がないのですが、夜勤のときは時間に余裕ができるときがあります。そんなときは、今日は○○さんと決めて、じっくり関わるようにしています。何かが目に見えてよくなるというわけではありませんが、自分にとっては大切にしたい時間です。

ひと言でいえば、「なんでも屋」になりたい。異動して半年ということで、まだ遠慮している部分もあるのですが、介護の仕事にもさらに関わっていきたいと思います。看護師でも、介護士でも、ひとりでできることは限られています。看護と介護の仕事のあいだに無理に線を引くのではなく、協力できるところは協力しあって、仕事を進めていけたらと考えています。
将来は、グルームホームで仕事をしたい、という夢をもっています。一緒にごはんをつくり、一緒に散歩をして、一緒に眠る。地域社会に溶け込みながら、より家族的な雰囲気のなかで生活することがやはり理想だと思うんです。この施設もそんな介護を目指しているのですが、入所者さんが大勢待っているような現状ではなかなか難しいものがあります。自分が考える看護、介護を実現するためにはどうすればいいのか。そんなことも考えながら、日々の仕事に取り組んでいきたいと思います。


